かいごの心得

 これからおうちかいご、つまり在宅介護を考えている方へ。はっきり申し上げます。おうちかいごは、誰にでもできる、どんなおうちでもできる、なんて生易しいものでは決してありません。
 今回は介護する側の方へ向けて語ります。すでにおうちかいごをしているよ、という方にもお付き合いいただきたい。理由は最後に。5分くらいでしょうか。

 おうちかいごにはどんな困難があるのでしょうか。介護を受ける方の状態含め、ご家庭の事情によりますし、必ずではありませんが、大なり小なり犠牲というか、失うものがあります。

お金とか、場所とか、時間とか。

人間関係とか、仕事とか、睡眠時間とか。

健康とか、自由とか。

 そしてそれがどれくらい続くのか、1年なのか、5年なのか、20年なのか、はたまた数日なのか。皆目見当もつかない場合もあります。当初、数日くらいの話であったのが、いつの間にやら数十年に及ぶことになるケースもあります。介護を受ける方の、見たくなかった一面を見てしまうかもしれません。

 やることは子育てと似ていると思われがちですが、実際やってみると、相手は大人だし、いつまで続くかわからない上に、どんどん大変になっていくというのが介護。生活はすべて介護中心に組み立てられてしまうようになります。
 ↓こんな具合です。
・友人たちと旅行の話がある、けど、家を空けられないからあきらめる。
・団地の役員をやらなければいけない、けど、介護があるからと断った(ら裏で何やら言われている)。
・残業をしなくてはいけない、けど、デイサービスから帰ってくる母を迎えなければいけないので残業を断る。
・資格取得のために勉強をしたい、けど、介護で夜も眠れず気力・体力が続かない。

もし、介護のない生活を選んでいたら、今頃は…。

 ここでひるんでしまった方。いろんな事情がありますから無理にとは絶対に言いません。ただ、少しでも良いですから、おうちかいごに取り組んでみてください。取り組もうとしてみてください。取り組むというのは、本気で「おうちかいごをしてみよう」という考えに向き合うことです。実際にやってみるとは限りません。始めてしまったら、すぐにはやめられませんし。最初から介護は無理だぞ、と納得できる理由を並べるのではなくて、実際にいろいろなサービスをあたってみる。その上でやはり無理だ、という結論に達するならば後悔は少ないはず。

 誤解をしてほしくないのですが、osenbeは、おうちかいごが良いだとか偉いだとか正義だとか、そう考えているわけでもなく、どんな家庭でもおうちかいごをして欲しいと思っているわけでもありません。おうちかいごを通して、人生の1つのターニングポイントにある介護を受ける方について、本気で考えてほしいのです。それは、あとあと後悔しないように、介護を受ける方と、その家族や友人、そして何より自分自身のために、本気で取り組んでほしいのです。後悔しないように。

最後に、すでにおうちかいごをしているよ、というあなたへ。

 先輩介護者として読んでいただけたのではないでしょうか。osenbeがなぜ今更、経験者の方にも介護入門みたいな記事にお付き合いしてもらいたかったのか。
 それは、おうちかいごをしている、ということが、とてもすごいことだと認識してほしかったからです。そのことを自分で認めてほしいのです。認めるほどのことはやってないよ、と思うかたもいるかもしれません。そんなことはありません。すごいです。

 何度も言いますが、おうちかいごは誰にでもできることではありません。大なり小なりの犠牲を払って、かけがえのない時間を作り出しているのです。かけがえのない時間というのは、具体的には、介護を受けている方がおうちで過ごす時間です。介護する方がおうちかいごをあきらめたら、その人は問答無用でおうちで過ごせなくなるのです。おうちで過ごせなければ、例えば施設に入所すれば、慣れない部屋で馴染みのない人に囲まれ、お客さん向けのごはんを食べて暮らすことになるわけです。思い出の家具や景色はおうちに置き去りです。そんな日々を送り、徐々に衰えていくことになります。
 かといって、おうちかいごをあきらめること、途中で挫折することに罪悪感を感じないでください。冒頭に書いたとおり、もともと、おうちかいごというのは生易しいものではありません。ただ、おうちかいごをあきらめたことに後悔はしないようにだけはしてほしい。介護される方のかけがえのない時間を作れるかどうかは、介護する人にかかっているのです。やれるだけやったけどもう限界、となれば後悔は少ないはず。

 介護は義務と感じる人もいるでしょう。愛情の表現であることも。しかし、24時間365日、ずっと続けることは困難な時もあります。もし、自分が壊れそうになったら、虐待を止められなくなったら、おうちかいごを休みましょう。すぐに市町村の福祉窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに相談してください。もし状況が変わってまたおうちかいごができそうだと思えたら、そこからまた再開すればいい。おうちへはいつでも帰ることができます。

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